これまで学んできたポリエチレンやポリスチレンなどは、1種類のモノマー(単量体)がズラッと繋がった高分子でした。これを「単独重合体(ホモポリマー)」と呼びます。
しかし、世の中にある便利なプラスチックやゴムの多くは、2種類以上の異なるモノマーを混ぜ合わせて重合させて作られています。この手法を「共重合(Copolymerization)」と呼び、できあがった高分子を「共重合体(コポリマー)」と呼びます。
今回は、なぜわざわざモノマーを混ぜるのかという目的と、「4種類の共重合体」について図解入りで解説します!
なぜ共重合をするのか?(目的とメリット)
一言で言えば、「複数の素材の『いいとこ取り』をして、弱点を克服するため」です。
金属でいう「合金(鉄と炭素を混ぜて鋼にするなど)」をイメージしてください。
例えば、モノマーAからできるプラスチックが「硬いけど、脆くて割れやすい」という性質を持ち、モノマーBからできるプラスチックが「柔らかいけど、強度が足りない」という性質を持っていたとします。
この2つを共重合させると、「硬くて、しかも衝撃に強くて割れにくい(しなやかさを持つ)」という、理想的な性質を持った全く新しいプラスチックを生み出すことができるのです。
覚えよう!共重合体の4つの分類
2種類のモノマー(AとB)を混ぜて重合させるとき、それらがどのように並んで繋がるかによって、共重合体は大きく4つのパターンに分類されます。
大学のテストや院試では、この4つの名前と並び方を答える問題が頻出ですので、しっかり押さえておきましょう。
① ランダム共重合体 (Random Copolymer)

モノマーAとBが、完全に無秩序(ランダム)に並んで繋がった共重合体です。
一般的なラジカル重合などで2種類のモノマーをただ混ぜて反応させると、多くの場合この形になります。AとBの性質が平均化されたような、中間の性質を持つ素材になります。
② 交互共重合体 (Alternating Copolymer)

モノマーAとBが、必ず1個ずつ交互に並んで繋がった共重合体です。
「AはBと繋がりたがり、BはAと繋がりたがる」という特殊な相性を持つモノマー同士を組み合わせたときにだけ生まれます。非常に規則正しい構造を持っています。
③ ブロック共重合体 (Block Copolymer)

Aが連続して繋がった「ブロック」と、Bが連続して繋がった「ブロック」が、大きく結合した共重合体です。
前回の記事で解説した「リビング重合」を使うことで、この構造を自在に作ることができます(Aを食べ尽くした後に、Bを投入する手法でしたね!)。Aの性質とBの性質が混ざり合わず、両方の長所をハッキリと併せ持つ高機能な素材(熱可塑性エラストマーなど)になります。
④ グラフト共重合体 (Graft Copolymer)

幹となる「Aのホモポリマー(主鎖)」に対して、枝となる「Bのホモポリマー(側鎖)」が接ぎ木(グラフト)のようにくっついた構造です。
すでに完成している高分子Aに、別のモノマーBを後から反応させて枝を生やして作ります。主鎖の丈夫さを保ちながら、表面の性質(水へのなじみやすさ等)だけを枝(B)の性質に変えたい時などに大活躍します。
私たちの身の回りにある代表的な共重合体
最後に、この共重合の技術が実際の社会でどのように役立っているか、有名な例を2つ紹介します。
① SBR(スチレン・ブタジエンゴム)
- モノマー: スチレン + ブタジエン
- 分類: ランダム共重合体スチレンの「硬さ・加工しやすさ」と、ブタジエンの「ゴムとしての弾力」を掛け合わせた素材です。現在、自動車のタイヤに最も多く使われている、世界で一番生産量の多い合成ゴムです。
② ABS樹脂
- モノマー: アクリロニトリル(A) + ブタジエン(B) + スチレン(S)
- 分類: グラフト共重合体(など)なんと3種類のモノマーを共重合させた最強クラスのプラスチックです。アクリロニトリルの「耐薬品性」、ブタジエンの「耐衝撃性」、スチレンの「光沢と加工性」をすべて兼ね備えています。レゴブロック、家電のボディ、車の内装など、硬くて割れにくくツヤのある製品には、ほぼ間違いなくこのABS樹脂が使われています。
まとめ
共重合体(コポリマー)の4つの並び方はイメージできましたか?
| 名称 | 並び方のイメージ | 特徴 |
| ランダム | A-B-B-A-A-B | 無秩序。一般的な共重合。 |
| 交互 | A-B-A-B-A-B | 1個ずつ規則正しく並ぶ。 |
| ブロック | A-A-A-B-B-B | まとまりごとに繋がる。リビング重合が活躍! |
| グラフト | 幹(A)に枝(B) | 接ぎ木構造。表面改質などに便利。 |
単なる化学反応式だけでなく、「ABS樹脂のようなスゴイ素材を作るための設計図なんだ!」と考えると、少しワクワクしてきますよね。
次回は、この「ランダムになるか、交互になるか」を決定づける重要な要素である「モノマー反応性比($r_1, r_2$)」について、少しだけ数式を交えて深く掘り下げていきます!

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