極性と分子間力(水素結合・ファンデルワールス力など)

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 今回は分子の極性と分子間力について解説していきます.

極性

 原子には電子の引き寄せやすさに差があります.電子を引き寄せやすい原子もあれば,電子をあまり引き寄せない原子もあります.そのため,分子を形成した際に電子に偏りが生じるものがあります.この分子内での電子の偏りのことを極性と言い,極性を持った分子のことを極性分子と呼びます.逆に極性を持たない分子非極性分子と呼びます.また,極性分子は電気陰性度の差により部分的に正に帯電したり,負に帯電したりしています.このような部分的な電子の偏り分極と呼び,正に帯電している部分を正に分極,負に帯電している部分を負に分極していると言います.

 極性分子の例を考えてみましょう.極性分子には例えば水分子があります.水分子は下のような構造をしています.

 ここで,酸素原子は水素原子よりも電気陰性度が大きく電子を引き寄せやすい性質があります.そのため,下の矢印の向きに電子が引っ張られることで,酸素原子は負に分極,水素原子は正に分極します.

 ここで,正に分極している原子にはδ,負に分極している部分にはδと書きます.

 次に無極性分子を見てみましょう.最も簡単な無極性分子は水素分子です.

 水素分子は2つの水素原子が結びついてできているため,電気陰性度に差がありません.そのため極性が存在しないのです.他の無極性分子には二酸化炭素やメタンなどがあります.

二酸化炭素

メタン

 これらの分子は同じ原子同士が結合している訳ではありません.しかし,極性はありません.その理由は対称性です.対称性によって打ち消し合うことで分子としては極性がなくなります.

分子間力

 分子同士には分子間力が働きます.この分子間力分子間の静電的な引力のことです.静電的な引力とは+の電気と-の電気が引き合う力のことです.この分子間力には水素結合ファンデルワールス力があります.ファンデルワールス力はさらに配向力誘起力分散力に分けられます.

 分子間力は分子内での結合(共有結合,イオン結合,金属結合)よりも弱い力です.その分子間力の中では,水素結合は比較的強い力であり,ファンデルワールス力は弱い力になります.

水素結合

 水素結合とは電気陰性度が大きいフッ素や酸素,窒素原子と比較的電気陰性度が小さい水素原子の間で生じる引力のことです.水分子を考えてみましょう.水分子は次のように水素結合を形成しています.

 図中の点線が水素結合を表しています.ここで重要なのが非共有電子対と水素原子の間で水素結合を形成していることです.ほかのフッ化水素やアンモニアのような物質が水素結合を形成する場合も同様にフッ素や窒素上の非共有電子対と水素原子の間で水素結合を形成します.

 この水素結合は分子間力の中では強い力になります.そのため,この水素結合を形成するフッ化水素は塩化水素や臭化水素のようなハロゲン化水素と比較して沸点が高くなっています

 沸騰とは分子間での引力を振り切って気体として自由に飛び回ることができる様になる温度です.比較的強い引力である水素結合を形成する場合,分子間でのつながりが強くなるため,自由に飛び回るにはより大きなエネルギーを必要とするために沸点が高くなります.

 また,水の比熱が大きいのも水素結合に起因しています.比熱とは一言で言えば温度を上げるのに必要なエネルギーの大きさです.高温になるほど分子は自由に動けるようになります.しかし,水素結合を形成すると分子同士が結びつくことで分子の動きが制限されて自由に動きにくいです.そのため,水素結合を形成する水分子は比熱が大きくなります.

配向力

 配向力とは極性を持つ分子間で働く力であり,同じ電荷を帯びた部分が近づくと斥力が,異なる電荷が近づくと引力が働きます.図にすると次のようなかたちです.

斥力

引力

このような極性に基づいた分子間ではたらく引力や斥力が配向力です.

誘起力

 続いて誘起力です.誘起力とは,極性分子が非極性分子に接近することで非極性分子に電荷の偏りが生じることで発生する引力のことです.これを図にするとつぎのようになります.

 このように極性分子によって非極性分子に電荷の偏りが生じます.この様にして発生した引力が誘起力です.

分散力

最後に分散力です.分散力非極性分子も含めた全ての分子に働く引力です.分子の周りには分子が飛び回っています.ゆえに,ある一瞬を切り取ると電子の分布に偏りが生じています.たしかに,時間平均としては均一であり極性が無いとしてもある一瞬一瞬では偏りがあるのです.この一瞬の電子の偏りによって隣接する分子も電荷に偏りが生じて引力が働きます.このような瞬間的な電子の偏りによる分子間の引力が分散力です.

まとめ

 分子には電気陰性度の差により電荷の偏りである極性が生じます.分子にはこの極性を持つ極性分子と極性を持たない非極性分子があります.この極性が分子間力に影響を及ぼします.

 分子同士の間には分子間力という力が働きます.この分子間力には水素結合とファンデルワールス力があり,ファンデルワールス力はさらに配向力,誘起力,分散力に分けられます.この中でも水素結合は比較的強い分子間力になります.

以上,極性と分子間力でした.ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください.

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