今回は物質の反応性などを考える上で非常に重要なイオン化エネルギー,電子親和力,電気陰性度について解説していきます.
イオン化エネルギー
まずはイオン化エネルギーです.イオン化エネルギーとは“陽イオン“になるときに”必要な“エネルギーのことです.ここで非常に重要なのが「陽イオン」と「必要な」という点です.イオン化エネルギーは陰イオンではなく,陽イオンになるときのことを考えます.そして,陽イオンになるには電子を引き離さなければなりません.陽子と電子には引力が働きます.ですのでこの引力に反して引き離すにはエネルギーがひつようなのです.そのため”陽イオン”になるときに”必要な”エネルギーということになります.
ここで,電子を1つ引き離すために必要なエネルギーを第1イオン化エネルギー,2つの電子を引き離すときに2つ目の電子を引き離すために必要なエネルギーを第2イオン化エネルギーと呼びます.
では,周期表を考えたときに,イオン化エネルギーにはどのような傾向があるのか考えましょう.原子は貴ガスと同じように最外殻電子数が8つ(K殻の場合は2つ)のとき,安定になります.ですので,この状態になるように電子を引き離すために必要なエネルギーは小さくなります.つまり,1族のアルカリ金属の第1イオン化エネルギーは他の原子と比べて小さい値になります.逆に安定な状態にある貴ガスの第1イオン化エネルギーは非常に大きな値になります.
誰でも大変な状態よりは楽な状態あるいは好きなことをしている状態になりたいと考えますよね.原子がイオンになるときも同じようなことが起こります.安定な状態に移るのは簡単でも,安定な状態から不安定な状態には行きたがりません.ですので,アルカリ金属は小さく,貴ガスは大きくなります.
同族元素の傾向
さらに同族の周期にある原子について考えます.同族の原子の場合,下に行くほど原子半径が大きく,最外殻の電子が原子核から離れた位置に収容されます.外側にある電子の方が原子核から受ける引力が小さくなります.磁石でも,2つを近くに置いたときと遠くに置いたときでは遠い方が力は弱いですよね.そのため,電子がより離れたところにある下の方の原子の方が引力が小さいために,引き離すのに必要なエネルギーは小さくなります.つまり,同族元素では下の方がイオン化エネルギーが小さくなります.
同周期の傾向
では同周期ではどうなるでしょうか.結論から言うと,右側に行くほどイオン化エネルギーが大きくなります.これもまた,原子半径に起因しています.右側に行くほど,陽子の数が増えるため,最外殻の電子が受ける引力は大きくなります.そのため,より内側に引きつけられており,引き離すのにより大きなエネルギーが必要になります.よって,同周期では右に行くほどイオン化エエルギーが大きくなります.
以上のことをまとめると下のようになります.周期表で見ると,右上の方がイオン化エネルギーが大きく,左下に行くほど小さくなります.

イオン化エネルギーでもう一つ重要なのが,第Ⅰイオン化エネルギーよりも第2イオン化エネルギーの方が大きく,第2イオン化エネルギーよりも第3イオン化エネルギーのほうが大きいということです.この理由は,既に陽子の方が数が多い陽イオンの状態にある粒子から電子を引き離す方が必要なエネルギーは大きいからです.実際,第2イオン化エネルギーは原子によっては10倍以上になっています.
電子親和力
では次に電子親和力です.電子親和力は1価の“陰イオン“になるときに”放出する“エネルギーです.電子親和力は際ほどとは逆で「陰イオン」と「放出する」という点がポイントです.電子親和力は陰イオンになるときに考えます.原子が陰イオンになるとき,陽子からの引力で電子が引き込まれます.これによって先ほどのイオン化エネルギーとは逆にエネルギーが放出されます.引き離すのにエネルギーが必要なのですから,逆に引き込まれたらエネルギーは放出されそうですよね.
ではこの電子親和力にはどのような傾向があるのか考えましょう.
同族元素の傾向
同族元素では先ほど同様,下側に行くほど原子半径が大きくなります.そのため電子が陽子から受ける引力も小さくなってしまいます.引力が小さいので,電子を受け取りにくい状態になります.そのため,同族元素では下に行くほど電子親和力は小さくなっていきます.
同周期の傾向
では,同周期ではどうでしょうか.同周期の場合も先ほどと同様に右側に行くほど陽子の数が増えるため,電子が陽子から受ける引力が大きくなります.引力が大きいのですから,電子が引き込まれやすくなります.よって,同周期では電子親和力が大きくなります.
以上をまとめると下のような傾向になります.

ここで,貴ガスはその状態で安定です.ですので,この傾向に貴ガスは当てはまりません.むしろ貴ガスに余分な電子を与えるにはエネルギーを与えなければなりません.ですので,貴ガス以外でこの傾向が成り立つと考えてください.
電気陰性度
電子親和力とにた言葉で電気陰性度があります.電気陰性度とは,原子が電子を引っ張る力の強さを表した値のことです.電子親和力と似た意味ですが,いくつか違いがあります.
まず,電子親和力は「エネルギー」であったのに対して,電気陰性度は電子を引っ張る「力の強さ」のことである点です.電気陰性度はどの程度電子を引っ張りやすいかを示した値になります.
次に電気陰性度はイオンでは無く,分子の話をするときに使われます.例えば水を考えましょう.水は水素原子2つと酸素原子1つから構成されています.水素と酸素では酸素の方が電気陰性度が大きく,酸素の方が電子を引っ張りやすいです.ですので,水素から酸素に電子が引っ張られます.図にすると下のようなかたちです.

電子が水素側から酸素側に引っ張られることで,酸素は若干負に,水素は正に帯電します.このように分子内で電子がどのような状態になるかを考えるときに使うのが電気陰性度です.
ここで,このように分子内で電気陰性度の差によって部分的に正や負に帯電することを分極といいます.正に帯電する部分をδ+,負に帯電した部分をδ–と書きます.この分極により移動する電子の偏りはイオンに比べるとほんのわずかです.ですので,小さいという意味でδ(デルタ)を用います.
電気陰性度は電気陰性度と同様に,どちらも電子を引っ張るときのことを考えています.ですのでその傾向も全く同じになります.図にすると次のようになります.

まとめ
以上,イオン化エネルギー,電子親和力,電気陰制度でした.
・イオン化エネルギー … 陽イオンになるときに必要なエネルギー
・電子親和力 … 陰イオンになるときに放出するエネルギー
・電気陰制度 … 電子を引っ張る力の強さ
これら3つはややこしいですが非常に重要な考え方なので,化学を学ぶ上ではしっかりと理解しましょう.ご不明点等がございましたら,お気軽にお問い合わせください.


コメント