原子・分子の数とアボガドロ数

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 ここでは原子や分子の数について説明していきます.原子の数は非常に小さな粒子です.そのため,この世には非常に多くの原子が存在しています.では一体どのくらいの数なのでしょうか.今回はその点を考えていきます.

分子のサイズ

 まずは原子の大きさです.原子の大きさはものにもよりますがおよそ10-10 m = 100 pmです.ここで,長さの単位は次の様に表されます.

pm(ピコメートル)nm(ナノメートル)μm(マイクロメートル)mm(ミリメートル)m(メートル)
10-12 m10-9 m10-6 m10-3 m1 m

 こう言われても小さすぎてあまりイメージができないと思います.例えるならば人間と比較したときの原子の大きさは、地球と比較したときの1円玉の厚さくらいの差があります.これで少しはどのくらいの差なのか分かったでしょうか.

 原子レベルの小さい粒子の話をするときm(メートル)やpm(ピコメートル)という単位の他にÅ(オングストローム)という単位も使われることがあります.これは10-10 mを意味しています.

分子サイズの傾向

 原子の大きさは傾向として同族では下に行くほど,そして同周期では左に行くほど大きくなります.原子半径を表したグラフは下の通りです.

 上のグラフで,折れ線を右に追っていくと,特定の原子で急に原子半径が大きくなり,その後しばらくは小さくなり,また特定の原子で大きくなるというのが繰り返されています.この大きくなっている原子はすべて1族の原子です.

  ではなぜ,このような傾向になるのでしょうか.同族で下の方が大きくなる理由は単純です.同族元素ではより下に行くほど電子はより外側の殻に電子が収容されるようになります.そのため,原子半径が大きくなるのです.

 では,なぜ同周期では右に行くほど原子半径が小さくなるのでしょうか.同周期の場合,最も外側の殻は全て同じです.変化するのは陽子の数と電子の数です.(中性子も変化しますが,電荷を持たないので無視します)同周期では電子が収まる最外殻は同じまま右に行くほど陽子の数が増えていきます.そのため,マイナスの電気(電荷)をもつ電子がプラスの電気(電荷)を持つ陽子から受ける引力が大きくなります.それによって電子がより内側に引き込まれ,原子半径が小さくなるのです.

 ここで,勘が鋭い人は陽子と電子の数が同じなのだから平均したら,1つあたりの電子が受ける引力は同じままじゃないかと考えたかもしれません.確かに,1つの電子が1つの陽子から受ける引力を全て受け入れられればその通りです.しかし,電子は陽子からの引力を全て受け入れて,シャットアウトすることはできません.これを遮蔽効果と呼びます.

 例えばリチウムを考えてみましょう.リチウムは陽子を3つ,電子を3つ持ち,K(2)L(1)の電子配置です.つまり中心に+3の電気をもち,その周りに-3の電気を持っています.ここで,K殻はL殻よりも内側にあります.ですので,もし電子が陽子からの引力を全て受け入れることができればL殻の電子は+1の電気による引力を受ける様に見えます.しかし,実際はK殻の電子は全ては受け入れることはできずに漏れ出してしまい,L殻の電子は+1よりも大きい電気による引力を受けることになります.

 以上の理由で,同周期では右に行くほど漏れ出る電気が増えてより強い引力を受ける様になるために原子半径が小さくなるのです.

 ただし,貴ガスだけは傾向が異なります.もう1度グラフを見てみると,1族元素1つ前も少し原子半径が大きくなっています.これは,原子半径の測定法が原因で仕方の無いことです.原子半径は2つの同じ原子が結合した際の核の距離の半分の値を原子半径としています.図にすると次の様な形です.

 貴ガスはそれ単体で非常に安定な物質です.そのため,貴ガス同士で結びついて分子を作ることは基本はありません.そのため,自然と結合の距離が伸びてしまい,原子半径が大きいということになってしますのです.

原子の数

 では続いて,原子の数を考えていきましょう.まずは物質量molと言う考え方を思い出してみましょう.このmolとは陽子6個,中性子6個を持ち,質量数が12である炭素が12gあったときの原子の数を1molと考えるのでした.では,この1molのときどのくらいの数の原子があるのでしょうか.結論,1molあたり,6.02×1023の粒子が存在します.そして1molあたりの粒子の数を表す定数がアボガドロ定数NAです.すなわちアボガドロ定数NA=6.02×1023mol-1です.つまり,2molの分子があれば1.24×1024個,3molの分子があれば1.86×1024個ということになります.ですので,なんと炭素12gに6.02×1023個もの原子が存在しているのです.ちなみに6.02×1023は日本語で言うと6020垓です.大きすぎて全くイメージできませんね…

 では他の分子の粒子の数についても考えてみましょう.まずは単純な水素分子からです.水素分子は水素原子2つからできています.水素原子の原子量は1ですので,水素の分子量は2になります.つまり,モル質量は分子量にg/molという単位をつけたものでしたので,2g/molということになります.すなわち,1モルあたり2gということです.ですのでなんと水素は炭素よりも軽いわずか2gで6.02×1023個もの分子が存在しています.さらに,水素原子の数を考えると,水素分子は水素原子2つからできていたので,6.02×1023の2倍の1.24×1024個ということになります.

 では,ここで少し問題を出したいと思います.

問題
(1)水分子(H2O)が6.02×1023個あるとき,その重さは何グラムか.
(2)水分子(H2O)が6.02×1023個あるとき,原子は合計でいくつ存在するか.
ここで,水素原子の原子量は1,酸素原子の原子量は16とする.

解答
(1)水素分子の分子量は1+1+16=18です.ですので1molあたり18gということになります.6.02×1023個の粒子が存在するときの量が1molでしたから,答えは18gです.
(2)水分子には水素原子2つ,酸素原子1つが含まれています.つまり合計で3つの原子から構成されています.よって,水分子が6.02×1023個あるとき,原子は6.02×1023×3=1.86×1024個ということになります.

 どうでしょうか,これでmolとアボガドロ定数の意味が分かったでしょうか.

まとめ

 以上,原子・分子の数とアボガドロ数でした.このあたりの内容は化学を学ぶ上で根幹になるような内容です.ご参考になれば幸いです.もし説明が分かりにくい部分や質問などがございましたら遠慮無くお問い合わせください.

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