殻と原子の規則性

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 今回は原子が持つ電子に注目して解説していきます.原子は陽子と電子,中性子から構成されており,電子は物質の性質を考える上で非常に重要な因子です.

殻とは

 原子が持つ電子はと呼ばれるものに収まっています.この殻は内側から順にK殻,L殻,M殻・・・と続いていきます.内側から数えてn番目にある殻には最大で2n2の電子が収容できます.すなわちK殻には2個,L殻には8個,M殻には18個・・・の電子が収容されます.そして,殻に収容できるマックスの電子が収容された状態閉殻と呼びます.ちなみに,殻の名前がKから始まっているのは,当初K殻が発見された際,K殻よりも内側にも電子が納められていると考えられていました.そのためK殻と名付けられましたが,実際にはK殻が最も内側であり,それよりも内側には電子が存在しないとわかり,最も内側がK殻となっています.

 ナトリウムの電子の配置を考えてみましょう.ナトリウムは電子を11個持っています.電子は内側の殻から収まっていきます.ですので,まず一番はじめにK殻に電子が2つ収容されます.続いてL殻に電子が収容され,ここに8つ入ります.そして残る1つが最も外側のM殻に電子が納められます.これを図にすると次の様なかたちになります.

 最も外側の殻に納められた電子は最外殻電子と呼ばれます.最外殻電子は原子の結合などに関与するため価電子とも呼ばれます.ただ,最外殻電子と価電子では若干意味が異なります.それを買い悦するために必要なのがオクテット則という法則です.これは最外殻電子数が8つのとき安定になるという法則です.ただし,K殻の場合は2電子しか収まらないため,2電子で安定になります.このオクテット則から,最外殻電子数が8つのとき安定になり,反応に関与しなくなります.そのため,最外殻電子数が8つのとき価電子数は0個と数えます.ヘリウムの場合は最外殻電子数は2つですが,これ以上K殻に電子を収容できないため,このときも価電子は0個です.

 ここで周期表をもう一度振り返りましょう.

 周期表で縦の列は族でした.この族は最外殻電子数が同じ原子の集まりを表しています.1族は最外殻電子が1つ,2族は2つ,飛んで13族が3つ,14族が4つ,・・・,18族が8つです.また,横の列は周期でした.周期は最も外側が何殻かを表しています.第1周期がK殻まで,第2周期がL殻まで・・・第7周期がQ殻です.

 ここで,最外殻電子数を数える際に3族から12族を飛ばした理由が気になる方もいると思います.このときに必要になるのが2n2の式です.第4周期のカルシウムとスカンジウムを例に考えてみましょう.まず,カルシウムの場合,電子は基本的には内側の殻から収まっていき各殻の電子数はK(2)L(8)M(8)N(2)となっています.ここで少し不思議に感じた方がいるかもしれません.M殻は最大で18個の電子が収まるのに8個しか収まっておらず,次のN各が使われています.ここがポイントです.先ほどオクテット則を紹介しましたが,電子が8つ収まった状態は安定なのです.そのため,M殻に9個目の電子が入らずにN殻に電子が入ってしまいます.しかし,カルシウムの次のスカンジウムになると話が変ります.スカンジウムの場合はK(2)L(8)M(9)N(2)と1つ手前のM殻に電子が入り,N殻は電子が2つのままです.このように3族から12族の原子では1つ手前の殻に電子が収容されます.これにより3族から12族の原子は特徴的な性質を有しており,遷移金属と呼ばれます.

 周期表を見ると一番下にランタノイドとアクチノイドと書いてある部分があると思います.これも今説明したのと似た理由でこのように書かれています.今度はバリウムとランタンを考えてみます.まず,バリウムの電子はK(2)L(8)M(18)N(18)O(8)P(2)となっています.最外殻から1つ手前のO殻が8つの電子しか持たないのは先ほどと同じ理由です.そして今度は32個の電子を収容できるはずのN殻には18個しか電子が入っていません.N殻の場合,この18個の電子の状態も安定になります.そのため,19番目の電子が入らずに次の殻に進んでしまうのです.しかし,バリウムの次のランタンになるとK(2)L(8)M(18)N(19)O(8)P(2)のように2つ手前のN殻に電子が入ります.このため,欄外にランタノイド,アクチノイドという列が書かれているのです.

 また,族は最外殻電子数を表していると説明しました.この最外殻の電子は原子が結合を形成する際の非常に大きな要素になります.そのため,最外殻電子数が同じ原子の一部に名前がついています.それが次の通りです.

アルカリ金属・・・水素を除く1族(最外殻電子1つ)
アルカリ土類金属・・・2族(最外殻電子2つ)
ハロゲン・・・17族(最外殻電子7つ)
貴ガス・・・18族(最外殻電子8つ)

 このように周期表には多くの情報が詰まっており,原子の規則性基づいて配列されているものなのです.これが理解できれば周期表の見え方が少し変ってくるかもしれません.

発展

 ここまで,原子の電子は殻に収容され,円上に電子があるというような説明をしました.これは高校生レベルの化学であれば正しいです.しかし,この説明は正確ではありません.初めてこの内容を読んだ方などは混乱してしまう可能性が高いので興味がある方に向けて少しだけ解説します.

 電子は実際には電子の分布は軌道と呼ばれるもので表され,この軌道に存在しています.この軌道にはs軌道やp軌道などが存在しており,1つの軌道に2つの電子が収容されます.この軌道を図にすると次の様なかたちです.

 図に示したp軌道にはx,y,z方向に伸びた3種類の軌道が存在します.このs軌道やp軌道などは周期に応じて複数存在しています.

 例えばナトリウムの場合は1s軌道,2s軌道,1px,1py,1pz軌道,3s軌道,2px,2py,2pz軌道,4s軌道を持っています.1つの軌道には2つの電子まで収まることができます.まず最も安定な1s軌道に電子が収まります.これが先ほど紹介したK殻に対応します.続いて安定な2s軌道,次いで1px,1py,1pz軌道に電子が入り,これら4つがL殻に対応します.そしてM殻に対応する3s軌道,2px,2py,2pz軌道に収まり,最後にN殻に対応する4s軌道に電子が収まります.この軌道の考えを簡素化したのが殻という考え方です.

 実際は電子はこのような軌道上に存在しているのです.ただ,ここで非常に難しいのはこの図で書いた範囲内に確実に電子が存在するわけでは無いということです.この図はあくまでも電子が存在する確率が高い範囲を示したに過ぎません.ですのでこの範囲に電子が存在するかもしれないし,ひょっとしたら非常に貼られた場所に電子が存在しているなんてこともあり得ます.

 電子の存在は全て確率で語られます.この確率はシュレディンガー方程式という式を解くことで求められます.この式を解くことで,どこにどの程度の確率で電子が存在しているのかが分かります.

 軌道の解説はいったんここまでにします.もっと気になるという方は,申し訳ありませんが,軌道,シュレディンガー方程式,波動関数などといった用語で検索してみてください.

まとめ

以上,殻と原子の規則性でした.電子は殻と呼ばれる円上に内側から配列されていき,n番目の殻には2n2個の電子が収容されます.最も外側の殻の電子は最外殻電子と呼ばれ,これは反応に関与するためにアルカリ金属,アルカリ土類金属,ハロゲン,貴ガスと名前がついています.

 今回の内容で不明点などがございましたら,コメントいただけますと幸いです.今後ともどうぞよろしくお願いいたします.

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