濃度とは

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 今回は濃度について解説していきます.

濃度の種類

 濃度と言っても,実は3つの種類があります.質量パーセント濃度[%]モル濃度[mol/L]質量モル濃度[mol/kg]です.これらはそれぞれ次のように計算できます.

$$(質量パーセント濃度)[\%] = \frac{(溶質の質量)[g]}{(溶液の質量)[g]} \times 100$$

$$(モル濃度)[mol/L] = \frac{[溶質の物質量)[mol]}{(溶液の体積)[L]}$$

$$(質量モル濃度)[mol/kg] = \frac{(溶質の物質量)[mol]}{(溶液の質量)[mol/kg]}$$

 ここで,単位が非常に重要になりますので注意してください.中学校までで習う濃度は質量パーセント濃度で,濃度と聞いてなじみ深いのはこれだと思います.しかし,化学ではこの質量パーセント濃度を用いることは少ないです.

 化学の分野において濃度と言ったとき,最も頻繁に用いられるのはモル濃度[mol/L]になります.物質Aのモル濃度を表現するときは[A]のように[]で囲んで表します.濃度といったらまずはこれを考えてください.実験を行う際は,溶液は基本的にこのモル濃度をもとに調整して使用します.

 質量モル濃度が最も用いられるのは凝固点降下やモル沸点上昇のときです.凝固点降下やモル沸点上昇については別の記事で解説します.化学では質量の単位として[g]を用いることが多いです.しかし質量モル濃度の計算では[kg]を用いますので少し注意が必要です.

単位について

 濃度の単位について,先ほどはモル濃度は[mol/L],質量モル濃度は[mol/kg]で記載しました.確かにこの単位で表記されることが多いですが,別の表記をされることも多々あります.

 物質量の単位はmolです.しかし,mmolという単位が用いられることもあります.これはミリモルと読みます.ミリとはミリメートルなどで使われるミリであり,10-3という意味です.つまり1mol=1000mmolになります.

 濃度の単位にもこのmmolが使われることがあります.モル濃度であれば[mmol/L],質量モル濃度であれば[mmol/kg]です.一方で,分母のLやkgが他の単位になることはないと言っても良いでしょう.

 このmmol表記がいつ使われるのかというと,濃度が非常に小さい溶液の場合です.例えば,実験を行う際に触媒というものを用いることがあります.触媒とは反応を助ける物質であり,それ自体が変化することはありません.このような触媒の場合,反応で減ることがないため少量だけ入れれば良いということがあります.また,反応を始めるために開始剤というものが用いられることがあります.この開始剤は反応を始めるために必要であり,一度反応が反応が始まればそれ以外の物質で反応が進行します.そのため,反応を始めることさえできれば良いため多くを仕込む必要が無いのです.

 実はなんでも多く物質を仕込めば良いというわけでもないのです.物質によっては試薬も非常に高価ですしね.なので,こういった少量しか使用しない物質の場合はmmol表記が用いられます.

 ただし,計算の際は単位をしっかり確認することが必要です.例えば10mmol/Lの溶液を1L使用したさいの物質量は10mmol(=0.01mol)であり,10molではありません.モル濃度だからといって結果が必ずmolが使われているとは限りません.もしかしたらmmolかもしれません.ですので,単位は毎回確認するようにしましょう.

例題

 では,これらの濃度を扱えるようになるために例題で考えてみましょう.

問1
水94mLに酢酸6.00gを溶解させた.このときの質量パーセント濃度,モル濃度,質量モル濃度をそれぞれ求めよ.ただし,水の密度は1.00g/cm3,酢酸のモル質量は60.0g/mol,密度は1.00g/cm3とする.

解答

質量パーセント濃度
水の密度は1.00g/cm3であるから,質量は94gである.よって,酢酸を溶解させると合計100gとなる.よって濃度は次のように計算できる.
$$\frac{6}{100} \times 100 = 6.00$$
$\underline{6.00\%}$

モル濃度
酢酸の密度は1.00g/cm3であるから,6.00gの体積は6cm3=6.00×10-3Lである.また,水は94mlであるから,溶液の体積は0.100Lである.酢酸のモル質量は60.0g/molであるからヨウ化している酢酸は$\frac{6.00}{60.0} = 0.100 mol$である.よってモル濃度は以下のように計算できる.
$$\frac{0.100}{0.100} =1.00mol/L $$
$\underline{1.00mol/L} $

質量モル濃度
上記の計算より酢酸溶液の質量は100g=0.100kgである.また,酢酸の物質量は0.100molである.よって次のように計算できる.
$$\frac{0.100}{0.100} =1.00mol/L $$
$\underline{1.00mol/L} $

 ちなみに実際に市販されている一般的なお酢の主成分は酢酸であり,濃度4~5%ほどの酢酸水溶液です.

問2
質量パーセント濃度が98%である濃硫酸100mLを希釈して濃度10%の希硫酸を調製したい.このとき,何mLの水を加えれば良いか.また,調製した10%希硫酸のモル濃度を求めよ.ただし,水の密度は1.0g/cm3,硫酸の密度は1.8g/cm3,モル質量は98g/molとする.

解答

濃硫酸に溶解している硫酸は98gである.希硫酸の質量を$x$とおくと,水のみを加えるので,硫酸の質量は変化せず$\frac{98}{x} \times 100=10$が成り立つ.これを解くと$x=980$である.よって濃硫酸100gから希硫酸980gを調製するので水は880g加える.ゆえに加える水は$\underline{880mL}$

希硫酸が100gあるときを考える.このとき硫酸が10g,水が90gである.硫酸の密度は1.8g/cm3である.ゆえに硫酸の体積は$\frac{10}{1.8}cm^3$すなわち$\frac{10}{1.8} \times 10^{-3}L$である.また,水の体積は90mLである.ゆえに溶液の体積は$(\frac{10}{1.8}+90) \times 10^{-3}L$である.また,溶解している硫酸の物質量は$\frac{10}{98}mol$である.よって,モル濃度は次のように計算できる.
$$\frac{\frac{10}{98}}{(\frac{10}{1.8}+90) \times 10^{-3}}=\frac{10 \times 1.8 \times 10^3}{10 \times 98 + 90 \times 98 \times 1.8} = \frac{18000}{16856} = 1.1$$
$\underline{1.1mol/L}$

 濃硫酸を水で希釈する際には注意しなければなりません.それは大量の水に対して濃硫酸を少しずつ加えていくことです.濃硫酸と水を混合すると発熱するため,濃硫酸に水を入れていくと突沸する恐れがあり非常に危険です.そのため,絶対に水に濃硫酸を入れます.

 私は以前誤って濃硫酸に水を入れてしまったことがあります(汗).水も濃硫酸も透明な液体なので,区別がつかず間違えてしまいました…このときは希硫酸が沸騰してしまい,あわててフラスコを氷浴で冷やしました.皆さんは危ないので間違えないように気をつけましょう.

まとめ

 濃度には質量パーセント濃度[%],モル濃度[mol/L],質量モル濃度[mol/kg]といくつか異なる書き方があります.これらは単位がことなるため,同じ溶液でもそれぞれ全く異なる値になってしまいます.これらの違いを理解して扱えるようになりましょう.

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