これまで、ナイロンなどを作る「逐次重合」、ラジカルに代表される「一般的な連鎖重合」、そして成長が止まらない「リビング重合」について解説してきました。
今回は、これら3つの重合方法のメカニズムの違いを「一つのグラフ」で一気に総復習します! テーマは「反応率(p)に対する数平均重合度($\overline{X_n}$)の依存性」です。
それぞれの「モノマーの成長のしかた」をイメージできれば、丸暗記しなくても自然とグラフの形が浮かんでくるようになりますよ!
縦軸と横軸の意味を確認しよう
グラフを見る前に、まずは軸の意味を整理しておきましょう。
- 横軸:反応率 $p$(転化率)最初に入れたモノマーのうち、どれくらいの割合が反応したかを示します。(0%〜100%)
- 縦軸:数平均重合度 $\overline{X_n}$できあがったポリマーの「鎖の長さ(繋がったモノマーの数)」を示します。
それでは、3つの重合方法のグラフの形と、その理由を見ていきましょう。
逐次重合:最後に急成長する「大器晩成型」
逐次重合(縮合重合など)は、容器内の全員が少しずつ手を繋いでいく反応です。この関係性を表すのが「カロザースの式」でしたね。
$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – p}$$
グラフの形
反応率 $p$ が0からスタートし、50%、80%と進んでも、グラフは地を這うように低空飛行を続けます。しかし、$p$ が95%を超えた最終盤で*突然天を突くように急上昇(カーブ)します。

なぜこの形になる?
逐次重合では、最初は「モノマー同士」がくっついて二量体になり、次に「二量体同士」がくっついて四量体になる……というように、全員が均等に成長します。
そのため、反応率が80%や90%の時点では、まだ短い鎖(オリゴマー)がたくさん泳いでいるだけの状態です。最後の最後(99%以上)になってようやく、長い鎖同士が結合して巨大な高分子が完成するため、このような大器晩成型のグラフになります。
一般的な連鎖重合:最初からフルスロットルの「スタートダッシュ型」
一般的な連鎖重合(ラジカル重合など)は、少数の開始剤から生まれたラジカルが、周囲のモノマーを猛スピードで次々と飲み込んでいく反応です。
グラフの形
逐次重合とは真逆です。反応率 $p$ がほぼ0(反応開始直後)の段階で、グラフはすでに高い重合度の位置にドンと現れます。その後、反応率が上がってモノマーが減っていっても、グラフはほぼ横ばい(あるいは少し低下・上昇する程度)のまま進みます。

なぜこの形になる?
ラジカルの寿命はわずか数分の1秒〜数秒です。1つのラジカルが生まれると、一瞬で数千個のモノマーを飲み込んで巨大な高分子になり、すぐに死んで(停止して)しまいます。
つまり、反応容器の中では「巨大な高分子」と「全く手付かずのモノマー」が混在しており、時間が経つにつれて「巨大な高分子の数」が増えていくだけです。そのため、いつサンプリングしても、できあがっているポリマーの長さ(重合度)自体は最初から高く、一定に保たれます。
リビング重合:素直に伸び続ける「堅実・比例型」
リビング重合(アニオン重合など)は、連鎖重合の仲間ですが「停止反応がない」という特殊な性質を持っています。
グラフの形
グラフは原点(0, 0)からスタートし、右肩上がりの綺麗な直線(比例のグラフ)を描きます。
$$\overline{X_n} \propto p$$

なぜこの形になる?
リビング重合では、開始剤を入れると「すべての成長末端(活性種)」が同時にスタートし、途中で死ぬことなく、全員が同じペースでモノマーを食べていきます。
そのため、消費されたモノマーの量(反応率)が増えれば増えるほど、それに比例して鎖の長さ(重合度)も均等に長くなっていきます。非常に素直でコントロールしやすい反応であることが、この真っ直ぐな直線から読み取れます。
まとめ:3つの違いをイメージで覚えよう!
グラフを描くときは、以下のイメージを思い浮かべながら線を引いてみてください。
| 重合方法 | グラフの特徴 | 成長のイメージ |
| 逐次重合 | 終盤で急上昇 | 全員で少しずつ手を繋ぎ、最後に巨大化 |
| 連鎖重合 | 最初から高く横ばい | 1人が一瞬で爆食いして死ぬ、を繰り返す |
| リビング重合 | 原点から直線(比例) | 全員が同時に、同じペースで食べ続ける |

この1つのグラフの中に、これまで学んできた高分子化学のメカニズムの違いがすべて詰まっています。なぜその形になるのかを自分の言葉で説明できるようになれば、重合反応の基礎はバッチリです!

コメント