【高分子化学】逐次重合とは?メカニズムとカロザースの式を分かりやすく解説!

高分子化学

プラスチックや合成繊維など、私たちの身の回りにある高分子(ポリマー)は、小さな分子(モノマー)が数千〜数万個も繋がってできています。

この「モノマーを繋げる反応」には、大きく分けて「連鎖重合」と「逐次重合」の2種類があります。今回は、ナイロンやペットボトル(PET)などの合成に用いられる逐次重合にスポットを当てて、その仕組みや特徴を分かりやすく解説します!

逐次重合と連鎖重合に関してはこちらの記事でも解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。

逐次重合(Step-growth polymerization)とは?

逐次重合とは、その名の通り「順番に(逐次)、少しずつ分子が繋がっていく」重合方法です。

分子の両端に「他の分子と手を繋げる場所(官能基)」を持ったモノマー同士が反応し、短い鎖(オリゴマー)を作ります。そして、その短い鎖同士がさらに反応して少し長い鎖になり、最終的に巨大な高分子へと成長していきます。

身近な逐次重合の例

  • ポリアミド(ナイロンなど): アミノ基($-NH_2$)とカルボキシ基($-COOH$)が水分子を出しながら繋がる。
  • ポリエステル(PETなど): ヒドロキシ基($-OH$)とカルボキシ基($-COOH$)が水分子を出しながら繋がる。
  • ポリウレタン: イソシアネート基($-NCO$)とヒドロキシ基($-OH$)がそのまま繋がる。

※水などの小さな分子が抜けながら繋がる反応を特別に「重縮合」と呼びますが、これも逐次重合の仲間(メカニズムの一つ)です。

逐次重合のメカニズムと特徴

逐次重合には、もう一つの代表的な重合方法である「連鎖重合」とは全く異なる、いくつかのユニークな特徴があります。

特徴①:誰とでも手を繋げる(モノマー同士、鎖同士でも反応する)

連鎖重合の場合、成長している特定の鎖の「先端」にしか新しいモノマーはくっつきません。

しかし逐次重合では、反応容器の中にあるすべての分子がいつでも誰とでも反応できます。

  • モノマー + モノマー $\rightarrow$ 2量体(ダイマー)
  • 2量体 + モノマー $\rightarrow$ 3量体(トリマー)
  • 2量体 + 2量体 $\rightarrow$ 4量体(テトラマー)
  • 10量体 + 10量体 $\rightarrow$ 20量体

このように、最初は一斉に短い鎖(オリゴマー)が作られ、反応の後半になってようやく長い鎖同士が結合して一気に巨大化します。

特徴②:モノマーはすぐに消えるが、高分子になるのは最後

上記のメカニズムにより、反応をスタートするとモノマー(単体)はあっという間に消費されて無くなります。しかし、この段階ではまだ2個〜10個程度が繋がった「短い鎖(オリゴマー)」ばかりで、プラスチックとしての強度を持つような「高分子」にはなっていません。

実用的な長さの高分子を得るためには、反応を極限まで(99%以上)進める必要があります。

逐次重合の要!「カロザースの式」

逐次重合において、「反応がどれくらい進んだか(反応率)」と「分子がどれくらい長く繋がったか(平均重合度)」の関係を表す非常に重要な公式があります。それがカロザースの式(Carothers equation)です。(ナイロンの発明者であるウォーレス・カロザースにちなんで名付けられました)

数平均重合度を $\overline{X_n}$、反応率(官能基が反応した割合)を $p$ とすると、以下の式で表されます。

$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – p}$$

  • $\overline{X_n}$ : 数平均重合度(平均して何個のモノマーが繋がっているか)
  • $p$ : 反応率(0〜1の数値。1なら100%反応したことを示す)

反応率 $p$ と重合度 $\overline{X_n}$ の関係を見てみよう

この式に実際の数値を入れてみると、逐次重合の恐ろしい(?)特徴が見えてきます。

  • 反応率 50%($p = 0.5$)のとき$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – 0.5} = 2$$半分も反応したのに、平均するとまだ2個(2量体)しか繋がっていません。
  • 反応率 90%($p = 0.9$)のとき$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – 0.9} = 10$$90%反応させても、たった10個(10量体)の短い鎖です。これではまだドロドロの液体や脆い粉です。
  • 反応率 99%($p = 0.99$)のとき$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – 0.99} = 100$$ここでようやく100個繋がりました。高分子らしさが出てきます。
  • 反応率 99.9%($p = 0.999$)のとき$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 – 0.999} = 1000$$

このように、逐次重合では反応率を99%以上にしないと、実用的な高分子(重合度100以上)が得られないことが数式からも分かります。そのため、実際の工場では反応で生じる水などを徹底的に取り除き、少しでも反応率を100%に近づける工夫がされています。

連鎖重合との違い(まとめ)

最後に、「逐次重合」と「連鎖重合」の違いを表にまとめます。

比較項目逐次重合(Step-growth)連鎖重合(Chain-growth)
反応の進み方すべての分子同士が無差別に繋がる特定の活性種(先端)にモノマーが次々と付く
モノマーの消費反応の初期に一気に消費されて無くなる反応の進行とともにゆっくり減っていく
分子量(重合度)の増加反応の最終盤(反応率99%以上)で急激に大きくなる反応初期から巨大な分子が一瞬でできる
途中の状態短い鎖(オリゴマー)がたくさん存在する巨大な高分子と、未反応のモノマーが混ざっている
代表的なポリマーポリアミド(ナイロン)、ポリエステル(PET)ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル

おわりに

いかがでしたか?逐次重合は「みんなで一斉に少しずつ手を繋いでいく」ような反応です。そのため、全員が長く繋がるには非常に高い反応率が必要になります。カロザースの式は計算問題でも頻出ですので、$p$ と $\overline{X_n}$ の関係(グラフの形)をしっかりイメージできるようにしておきましょう!

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