前回の記事では、2種類のモノマーを混ぜて重合させる「共重合」には、ランダム、交互、ブロック、グラフトという4つの配列パターンがあることを解説しました。
では、フラスコの中にモノマーAとモノマーBを適当に混ぜて重合をスタートさせたとき、それが「ランダム」になるのか、それとも「交互」になるのかは、一体何によって決まるのでしょうか?
その運命を握っているのが、今回解説する「モノマー反応性比($r_1, r_2$)」です。
重要なパラメータですが、「モノマーの好み(同族嫌悪か、仲間意識か)」というイメージを持てば、数式の意味がスッキリと理解できますよ!
成長末端の「究極の2択」
共重合の反応中、ポリマーの成長末端(ラジカルなど)は、次に食べるモノマーを探しています。
いま、フラスコの中にはモノマー1($M_1$)とモノマー2($M_2$)の2種類がいるとします。
このとき、$M_1$の形をした成長末端($\sim M_1 \cdot$)には、究極の2択が迫られます。
- 自分と同じ種類の $M_1$ を食べる(速度定数:$k_{11}$)
- 自分と違う種類の $M_2$ を食べる(速度定数:$k_{12}$)

※ $k_{11}$ の最初の「1」は現在の末端の種類、次の「1」は攻撃する相手の種類を表します。
同じように、$M_2$の形をした成長末端($\sim M_2 \cdot$)にも、自分と同じ $M_2$ を食べる($k_{22}$)か、違う $M_1$ を食べる($k_{21}$)かの2択があります。
モノマー反応性比($r_1, r_2$)の定義式
この「自分と同じ種類が好きか?違う種類が好きか?」という好みの割合(比)を数値化したものが、モノマー反応性比($r_1, r_2$)です。定義式は非常にシンプルです。
$$r_1=\frac{k_{11}}{k_{12}}$$
$$r_2=\frac{k_{22}}{k_{21}}$$
数式が苦手な方も安心してください。この式の意味は、分母と分子の勝負です。
- $r > 1$ の場合: 分子(自分と同じものを食べる速度)の方が大きい。つまり「同族が好き(ホモ重合しやすい)」。
- $r < 1$ の場合: 分母(違うものを食べる速度)の方が大きい。つまり「異種が好き(交差重合しやすい)」。
この $r_1$ と $r_2$ の値の組み合わせによって、できあがる共重合体の配列(運命)が完全に決定されます!
$r_1, r_2$ の値で決まる4つの共重合パターン
$r_1, r_2$ の値と共重合体の分類の結びつきを整理しましょう。
パターン①:$r_1 \approx 0, r_2 \approx 0$(交互共重合)
【モノマーの気持ち】「自分と同じ奴は絶対に嫌だ!相手とだけ手を繋ぎたい!」
$r$ が0に近いということは、自分自身と反応する速度($k_{11}, k_{22}$)がほぼゼロということです。
$M_1$末端は必ず $M_2$ を食べ、$M_2$末端は必ず $M_1$ を食べます。その結果、見事な交互共重合体(-1-2-1-2-1-2-)ができあがります。
(例:スチレン と 無水マレイン酸 の共重合)
パターン②:$r_1 \approx 1, r_2 \approx 1$(理想共重合/ランダム共重合)
【モノマーの気持ち】「自分と同じでも違っても、どっちでもいいよ〜」
自分を食べる速度と相手を食べる速度が同じ($k_{11} \approx k_{12}$)状態です。
成長末端は相手の素性を全く気にせず、たまたま近くにいたモノマーをパクパク食べていきます。その結果、完全に無秩序なランダム共重合体(-1-2-2-1-1-2-)になります。
パターン③:$r_1 > 1, r_2 > 1$(ブロック的/ホモポリマーの混合物)
【モノマーの気持ち】「俺たちは俺たちだけで集まる!お前らとは関わらない!」
どちらも自分と同じ種類とばかり反応したがる状態です。
この場合、$M_1$は$M_1$だけで繋がり続け(-1-1-1-1-)、$M_2$は$M_2$だけで繋がり続けます(-2-2-2-2-)。結果として、2つのホモポリマーが別々にできるか、非常に長いブロック共重合体のようなものができます。(※ただし、実際のラジカル重合でこのパターンになることは極めて稀です)。
パターン④:$r_1 \gg 1, r_2 \ll 1$
【モノマーの気持ち】「$M_1$の反応性が圧倒的すぎる!」
$M_1$の反応性が高すぎると、成長末端がどちらであっても、とにかく $M_1$ ばかりが優先して食べられます。
この場合、$M_1$がすべて消費されてから、ようやく残った $M_2$ が重合し始めるという偏った現象が起きます。
まとめ: $r_1, r_2$ はポリマーの設計図
- $r_1 = k_{11} / k_{12}$ (自分と同じものを食べる速度 $\div$ 違うものを食べる速度)
- $r = 0$ に近いほど「交互」になりやすい(同族嫌悪)
- $r = 1$ に近いほど「ランダム」になりやすい(えり好みしない)
これまでは「混ぜれば共重合体になる」と漠然と考えていたかもしれませんが、実はモノマーの種類(組み合わせ)によって $r_1, r_2$ の値は厳密に決まっており、化学者たちはこの数値を計算しながら「狙った配列のプラスチック」を作っているのです。
次回は、この $r_1, r_2$ の値と「仕込んだモノマーの量」から、できあがるポリマーの中に $M_1$ と $M_2$ が一体どんな割合で含まれるのかをピタリと計算できる魔法の数式、「共重合組成式(マヨ・ルイスの式)」について解説します!

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