【大学化学】高分子の「分子量」を完全攻略!数平均・重量平均の違いと計算式を徹底解説

高分子化学

化学の勉強をしていると、「水の分子量は18」「二酸化炭素の分子量は44」と、1つの物質につき1つの決まった分子量が存在するのが当たり前ですよね。

しかし、プラスチックなどの「高分子(ポリマー)」の世界では、その常識が通用しません。なぜなら、高分子には「数平均分子量」や「重量平均分子量」,「Z平均分子量」といった、複数の平均値が存在するからです。

今回は、なぜ高分子には「平均」が必要なのか、そして3つの平均分子量はどのような計算式で表され、何が違うのかを分かりやすく解説していきます!

なぜ高分子の分子量は「平均」で考えるのか?

高分子は、小さな分子(モノマー)が何千・何万個も繋がってできた巨大な分子です。

合成の際、すべての分子が「全く同じ長さ(同じ個数)」で綺麗に繋がってくれれば計算は簡単なのですが、現実の重合反応ではそうはいきません。1000個繋がった鎖もあれば、5000個繋がった鎖、10000個繋がった鎖など、長さ(分子量)がバラバラな分子の集まりになります。

このように、様々な長さの分子が混ざり合っている状態を「分子量分布を持つ(多分散である)」と言います。

長さがバラバラな集団全体を1つの数値で評価するためには、「平均値」をとるしかありません。そして、その「平均の取り方」によって、数値の意味合いが大きく変わってきます。

数平均分子量(Number-Average Molecular Weight)

1つ目は、最も直感的で分かりやすい数平均分子量です。記号では $\overline{M_n}$ と表されます。

イメージと特徴

これは、私たちが日常的に使う「テストの平均点」や「クラスの平均体重」と同じ、ごく普通の平均の出し方です。

全体の総重量を、分子の総数で割ったもの」になります。

  • 分子量が小さい(短い)鎖も、分子量が大きい(長い)鎖も、すべて「同じ1個」として平等に扱います。
  • 浸透圧法や末端基定量法など、分子の「個数」を数える測定方法で求められます。

計算式

分子量 $M_i$ の高分子が $N_i$ 個あるとします。

全体の総重量はそれぞれの分子量と個数を掛け合わせたものの和($\sum N_i M_i$)となり、それを全体の総数($\sum N_i$)で割るので、数平均分子量 $\overline{M_n}$ は以下の式で定義されます。

$$\overline{M_n} = \frac{\sum_{i} N_i M_i}{\sum_{i} N_i}$$

重量平均分子量(Weight-Average Molecular Weight)

2つ目は、少し考え方が複雑な重量平均分子量です。記号では $\overline{M_w}$ と表されます。

イメージと特徴

こちらは、分子の「個数」ではなく「重さ(重量・質量)」に注目して平均をとる方法です。

例えば、重さ1gの小さな分子と、重さ100gの巨大な分子が1個ずつあったとします。

数平均ではこれらを「同じ1個」として扱いますが、重量平均では「100gの巨大な分子の方が、全体の中で大きな割合(影響力)を占めている」と考え、重い分子のデータをより強く反映(ひいき)させて計算します。

  • 大きくて重い分子の影響を強く受けるため、プラスチックの強度や粘度など、物理的な性質を評価する際によく使われます。
  • 光散乱法などの測定方法で求められます。

計算式

分子量 $M_i$ の高分子の全体の重量を $W_i$ とします($W_i = N_i M_i$)。

各分子量が全体の重量に占める「割合」を掛けて足し合わせるため、重量平均分子量 $\overline{M_w}$ は以下の式で定義されます。

$$\overline{M_w} = \frac{\sum_{i} W_i M_i}{\sum_{i} W_i}$$

ここで、$W_i = N_i M_i$ を代入して個数 $N_i$ を使った式に変換すると、以下のようになります。

$$\overline{M_w} = \frac{\sum_{i} N_i M_i^2}{\sum_{i} N_i M_i}$$

分子の部分に $M_i$ の2乗が出てくるのが特徴的ですね。これによって、大きな分子量を持つ高分子の影響がより強調されることが数式からも分かります。

さらに巨大な分子をエコヒイキする「Z平均分子量」

数平均、重量平均に続いて、大学の専門課程で登場するのがZ平均分子量です。記号では $\overline{M_z}$ と表されます。(Zはドイツ語のZentrifuge=遠心分離機に由来します)

イメージと特徴

重量平均分子量($\overline{M_w}$)は「重い分子をひいきして計算する」とお伝えしましたが、Z平均分子量は「さらに超巨大で重い分子を、もっと強烈にエコヒイキして計算する方法」です。

高分子の中には、ごくわずかですが「規格外に長く繋がってしまった超巨大な分子」が混ざっていることがあります。この超巨大分子は、ほんの少し存在するだけで、溶かした時のドロドロ具合(溶融粘度)や、引っ張った時の強靭さなどに大きな影響を与えます。

このような「ごく一部の超巨大分子の影響」を評価したい時に、このZ平均分子量が使われます。

  • 超遠心分離法という、分子を猛スピードで振り回して沈み方の違いを見る測定方法などで求められます。

計算式

重量平均分子量の式から、さらに分子量 $M_i$ をもう1回ずつ掛けたような形になります。式で表すと以下の通りです。

$$\overline{M_z} = \frac{\sum_{i} N_i M_i^3}{\sum_{i} N_i M_i^2}$$

分子に $M_i$ の3乗が登場しました。2乗よりもさらに大きな乗数になるため、分子量 $M_i$ が大きい(=超重い)分子のデータが、結果の数値に圧倒的な影響を与えることが分かります。

3つの分子量の関係性と「分散度」

ここまで登場した3つの平均分子量($\overline{M_n}$、$\overline{M_w}$、$\overline{M_z}$)を、実際の高分子で計算して大きさを比べると、必ず以下の順番(大小関係)になります。

$$\overline{M_n} \le \overline{M_w} \le \overline{M_z}$$

  • $\overline{M_n}$(数平均): 平等に計算するので、一番小さな値になる。
  • $\overline{M_w}$(重量平均): 重い分子をひいきするので、少し大きな値になる。
  • $\overline{M_z}$(Z平均): 超重い分子を猛烈にひいきするので、一番大きな値になる。(※すべての分子の長さが完全に同じ場合にのみ、これらはすべてイコールになります)

分子量分布(山の形)と平均値の位置

高分子の長さを横軸に、その割合を縦軸にとってグラフにすると、ひとつの「山(分布曲線)」ができます。この山のどこにそれぞれの平均値が来るかをイメージすることが非常に重要です。

  • 山の頂上付近(一番個数が多い場所)に来るのが $\overline{M_n}$
  • 山の頂上より少し右側(重い方)にズレた場所に来るのが $\overline{M_w}$
  • さらに右側の裾野の方(超重い方)に引っ張られた場所に来るのが $\overline{M_z}$

分散度(多分散度)でバラつきを知る

高分子の長さがどれくらいバラバラに混ざっているかを示す指標を分散度(多分散度)と呼び、以下の式で計算します。

$$分散度 = \frac{\overline{M_w}}{\overline{M_n}}$$

この分散度が「1」に近ければ近いほど、分子の長さが綺麗に揃っている(分布の山が細くて尖っている)ことを意味します。逆に、値が大きければ大きいほど、短い分子から長い分子まで幅広くバラバラに混ざっている(分布の山がなだらかで広い)ことを示します。

例題:2種類の分子が混ざった高分子

ある高分子の試料が、以下の2種類の分子のみで構成されているとします。

  • 分子A(軽い): 分子量 $M_1 = 10,000$ が 9モル
  • 分子B(重い): 分子量 $M_2 = 100,000$ が 1モル

(※全体の90%が軽い分子で、たった10%だけが10倍重い巨大な分子、という状況です)

この試料の数平均分子量($\overline{M_n}$)重量平均分子量($\overline{M_w}$)Z平均分子量($\overline{M_z}$) をそれぞれ求めてみましょう。


計算の準備(部品を作ろう)

公式に代入する前に、分子と分母で使う「合計値($\sum$)」の部品をあらかじめ計算しておくとミスが減ります。

  1. 個数(モル数)の合計:$\sum N_i$$$9 + 1 = 10$$
  2. 重量の合計:$\sum N_i M_i$$$(9 \times 10,000) + (1 \times 100,000) = 90,000 + 100,000 = 190,000$$
  3. 重量平均で使う部品:$\sum N_i M_i^2$$$9 \times (10,000)^2 + 1 \times (100,000)^2 = 9 \times 10^8 + 100 \times 10^8 = 109 \times 10^8$$
  4. Z平均で使う部品:$\sum N_i M_i^3$$$9 \times (10,000)^3 + 1 \times (100,000)^3 = 9 \times 10^{12} + 1000 \times 10^{12} = 1009 \times 10^{12}$$

準備ができたので、さっそく計算していきましょう!


① 数平均分子量 ($\overline{M_n}$) の計算

数平均は「全体の総重量を、総数で割る」という普通の平均です。

$$\overline{M_n} = \frac{\sum N_i M_i}{\sum N_i} = \frac{190,000}{10} = 19,000$$

答え:19,000

(※90%が分子量10,000の分子なので、直感的な平均値も10,000側に寄っていますね。)

② 重量平均分子量 ($\overline{M_w}$) の計算

重量平均は、重い分子(分子B)の影響を強く受ける計算方法です。

$$\overline{M_w} = \frac{\sum N_i M_i^2}{\sum N_i M_i} = \frac{109 \times 10^8}{190,000} \approx 57,368$$

答え:約 57,368

③ Z平均分子量 ($\overline{M_z}$) の計算

Z平均は、重い分子(分子B)をさらに強烈にエコヒイキする計算方法です。

$$\overline{M_z} = \frac{\sum N_i M_i^3}{\sum N_i M_i^2} = \frac{1009 \times 10^{12}}{109 \times 10^8} \approx 92,568$$

答え:約 92,568

④ 分散度(多分散度)の計算

分散度は、重量平均分子量($\overline{M_w}$)を数平均分子量($\overline{M_n}$)で割ることで求められます。

$$分散度 = \frac{\overline{M_w}}{\overline{M_n}}$$

先ほど計算した値を当てはめてみます。

  • $\overline{M_w} \approx 57,368$
  • $\overline{M_n} = 19,000$

$$分散度 = \frac{57,368}{19,000} \approx 3.02$$

答え:約 3.02


結果の考察

計算結果を並べて比較してみましょう。

  • $\overline{M_n}$(数平均): 19,000
  • $\overline{M_w}$(重量平均): 57,368
  • $\overline{M_z}$(Z平均): 92,568

確かに、$\overline{M_n} < \overline{M_w} < \overline{M_z}$ の関係性が成り立っていますね!

続いて分散度については分散度が「1」に近いほど、すべての分子の長さが綺麗に揃っていることを意味します。一般的に、分散度が「1.0〜1.1」程度であれば非常に分布が狭く(長さが揃っている)、「2.0〜5.0」程度になると分布が広い(長さがバラバラ)と判断されます。

今回の計算結果は約3.02となりました。

全体の90%が軽い分子(分子量10,000)であるにもかかわらず、たった10%だけ混ざっている重い分子(分子量100,000)のせいで、**全体のバランスが大きく崩れ、分子量にかなり幅広いバラつきがある状態(多分散状態)**になっていることが、この「3.02」という数字から読み取ることができます。

まとめ

テストやレポート対策として、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう!

  • 数平均分子量($\overline{M_n}$):
    • 日常生活と同じ普通の平均(個数基準)。
  • 重量平均分子量($\overline{M_w}$):
    • 大きくて重い分子の影響を強く受ける(重量基準)。プラスチックの強度などに関わる。
  • Z平均分子量($\overline{M_z}$):
    • ごく一部の超巨大な分子の影響をさらに強く受ける。
  • 大小関係:
    • 常に $\overline{M_n} \le \overline{M_w} \le \overline{M_z}$ となる。
  • 分散度($\overline{M_w} / \overline{M_n}$):
    • この値で、分子量の「バラつき具合(分布の広さ)」が分かる。

数式がたくさん出てくると難しく感じますが、「どのサイズの分子をひいきして計算しているか?」というイメージを持てば、3つの違いがスッキリと理解できるはずです!

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